北九州市立大学 エネルギー循環化学科 李研究室

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研究紹介

重要保有技術

6. 疾患と匂いの関連性の解明 (Elucidation of the relationship between disease and odor) 2006〜(口腔がん研究 2013〜)

 現在、がん(悪性新生物)による日本人の年間死者数は37万人を超えており、がんの早期発見(早期診断)は現代医療において最も重要な関心事となっています。がん早期発見のための最近のアプローチとして、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography, PET)による検査が最も注目されていますが、造影剤の安全性、検査費用、部位(組織)ごとに診断結果の正確さが異なるなどの課題を抱えています。 一方、生理学的または病理学的プロセスや治療薬に対する薬理学的反応の判断指標としてバイオマーカーが広く用いられています(DNAやmRNA, タンパク質、血管新生物、神経伝達またはホルモン作用に関わる様々な物質など)。 それに加え、人体から排出される揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)が体内の健康状態を反映し、がんを初めとする様々な病気と深く関係していることが最近の研究から明らかになりつつあります。当研究室では、体内から放出される 揮発性代謝物質の一つであるアンモニアが肝臓や腎臓の疾患に深く関係することに注目し、この分野の研究を始めました。疾患と匂いの関連性を解明するためには、より詳細な分子情報が必要で、この研究にはガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)装置が重要な働きをします。

図.化学プラントである人体から排出される揮発性化学物質の同定イメージ

生体試料からの成分抽出とGCMS分析までの流れ

5. 前処理なしの生体試料(呼気)分析 (Direct breath analysis without pretreatment) 2015〜

 近年、疾患に関連する呼気中の揮発性有機物質(VOC)が多数報告されており、呼気や皮膚からのVOC検知による疾患の早期発見や予防への期待が高まっています。 呼気を用いた病気診断は長い歴史を持ちます。最近では、犬による病理学の知見も報告されており、皮膚がん、膀胱がん、肺がんや乳がんに関する研究がなされています。 一般的に呼気中に含まれる数百種以上の混合物はppbからpptの濃度範囲で存在し、その中の幾つかの物質は特定の病気と高い相関を示すことが最近の研究において少しずつ解明されています。 現在、呼気分析はバクテリアの繁殖やピロリ菌の感染などの限られた検査に応用されており、特定の疾患の診断に用いられている例は少ないです。これはVOCが幅広い範囲に存在することや分析に影響を与える水との混合物である複雑性から正確なVOCの分析が困難であるためであります。 我々の研究グループでは、大量の水分を含む(高湿度の)呼気中に含まれる微量のアンモニアが即時に検知できる水晶振動子(QCM)計測システムを世界初めて提案し、その実用化を目指しています。

図.呼気中に含まれる微量のアンモニアが即時に検知できる水晶振動子計測システム

4. 生化学用光ファイバーセンサ (Biochemical fiber optic sensors) 2008〜

 光が全反射する際に生じるエバネッセント波は通常では非常に弱いですが、クラッドを除去しファイバー表面を化学的に修飾することでそのわずかな光の漏れを増幅することができ、化学センサとして利用することができます。 このエバネッセント波とコア表面の環境が干渉することで屈折率変化や光吸収などの光学特性の変化が得られます。例えば、空気の屈折率は約1でありますが、光ファイバーを水に浸漬させることで周辺の屈折率が1.33まで増加します。 そのため、漏れる光の量が増加し透過スペクトルの光強度が減少することになります。また、光吸収をもつ物質(色素など)も同様の原理で、色素のような物質がコアに付着するとその物質がもつ吸収波長の光が特異的に減少します。 このような原理を利用することで目的の化学物質の存在や濃度の増減などの変化を容易に測定することができます。

図.光ファイバーのコアを全反射する光とコアからにじみ出るエバネッセントによる化学検知のイメージ図

3. トップダウンゾルゲルプロセス (Top-down sol-gel process) 2015〜

 一般的なゾル-ゲル法では前駆体となる金属アルコキシドを用い、水による加水分解と縮合反応から目的の金属酸化物をつくり出しますが、本手法は金属酸化物の前駆体としてNH4TiOF3というマイクロサイズの粒子からナノレベルの構造体を トップダウン方式で作り出すことができます。特に、複合材料の合成に有用でナノカーボン材料の表面上に酸化チタンを均一に修飾することも可能です。

図.トップダウンゾルゲルプロセスによるナノカーボン材料とのTiO2複合化

2. 気相表面ゾルゲル法 (Gas-phase surface sol-gel process) 2006〜

 表面ゾル-ゲル法は、水酸基など反応可能な基板表面を金属アルコキシド溶液に浸して吸着させた後、余分に吸着した金属アルコキシドを有機溶媒で洗浄、その後水による加水分解を繰り返すことで化学吸着・洗浄・加水分解の一連の操作から1 nmレベルの分子層を積み上げる製膜技術です。特に、さまざまな金属アルコキシドが利用可能であり、層単位で独立した構造制御ができるのでいろいろな金属酸化物との複合化も可能です。当研究グループは有機溶媒を使わずに気相の金属アルコキシドを用いてより簡単で精密に金属酸化物または有機物との複合薄膜を作製する新しい表面ゾルゲル法を提案しています。


図.気相表面ゾル-ゲル法によるTiO2製膜:(A) タンパク質との複合化と(B) Agマイクロパターン化の例

1. 分子インプリント (Molecular imprinting technique) 1996〜

 当研究グループでは金属酸化物薄膜中に鋳型分子を埋め込む分子インプリント方法として、1996年以降これまで2つのアプローチを試みてきました。一つは複合体積層方式で、もう一つは交互積層方式です。この研究は酸化チタンという金属酸化物を用いて行った世界初の分子インプリント研究として第一報の論文がアメリカ化学会(ACS)の専門雑誌Langmuirに掲載(Langmuir 1998, 14, 2857-2863)され、これまで多くの研究に引用されています。


図.表面ゾル-ゲル法による分子インプリント薄膜の作成概念図

研究プロジェクト

<過去または進行中のプロジェクト>
これまでのプロジェクト研究にご支援くださった公的機関・企業に御礼申し上げます。

研究期間研  究  課  題
R03〜
(2021〜)
東横化学株式会社(共同研究)
口臭及び歯周病検査デバイスの臨床研究に向けての最適化(共同研究ステージIII)
R02〜
(2020〜)
科研費基盤研究C(分担)
呼気中揮発性有機化合物の術中リアルタイム測定法の確立と術後合併症との関連
R01〜
(2019〜)
コンソーシアム事業
匂いによる超早期癌診断技術の確立
R01〜02
(2019〜2020)
東横化学株式会社(共同研究)
口臭及び歯周病検査デバイスの臨床研究に向けての最適化(共同研究ステージII)
R01 (2019)環境技術研究所重点研究推進支援プロジェクト
癌匂い情報の解明及び超早期癌診断先進医療技術の確立
H30 (2018)株式会社フジコー(共同研究)
多孔質光触媒の性能向上および量産化技術の研究
H30 (2018)株式会社EnH Japan(共同研究)
超微細気泡の物理化学的特性評価および環境・バイオ分野への応用
H29〜H30
(2017〜2018)
味の素ファインテクノ株式会社(共同研究)
感応膜及びそれを用いた匂いセンサーデバイスの開発
H29 (2017)株式会社EnH Japan(共同研究)
匂いの定量化を目指した計測デバイス及びその検知膜の最適化
H28〜H30
(2016〜2018)
東横化学株式会社(共同研究)
口臭及び歯周病検査用光ファイバセンサのための製膜方法の研究
H28 (2016)日本電波工業株式会社(共同研究)
QCMガスセンサ用修飾膜開発
H27〜H29
(2015〜2017)
日本学術振興会 科学研究補助金(基盤研究A)
匂いの質と空間の可視化センシング
H25〜H27
(2013〜2015)
日本学術振興会 科学研究補助金(基盤研究B)
頭頸部・上部消化器がん発症予知に係わる呼気中臭気情報と関連パラメーターの探求
H23〜H27
(2011〜2015)
東横化学株式会社(共同研究)
エバネッセント式漏水センサー
H21 (2009)北九州産業学術推進機構 海外連携プロジェクト助成等共同研究開発助成金
VOC検知のための光センサ開発
H21 (2009)北九州産業学術推進機構 シーズ探索助成金
自動車用高感度MEMS臭気センサの開発
H21 (2009)新日鉄(受託研究)
広域火災監視システムの開発
H20〜H22
(2008〜2010)
韓国部品・素材産業振興院 素材源泉技術開発事業
One-Spot多重生体分子測定素材技術開発(Free-standingバイオナノ薄膜製造技術開発)
H20 (2008)北九州産業学術推進機構 海外連携プロジェクト助成等共同研究開発助成金
VOC検知のための光センサ開発
H19〜H23
(2007〜2011)
文部科学省 知的クラスター創成事業(第II期)
MEMSセンサデバイスの高感度化とシステム化技術の研究開発(超高感度MEMS臭気センサデバイス・疾病診断システムの研究開発)
H19 (2007)北九州産業学術推進機構 海外連携プロジェクト助成等共同研究開発助成金
自己組織化ナノコーティングを行った長周期グレーティング光ファイバーによるガスおよび化学蒸気の検知
H19 (2007)北九州産業学術推進機構 海外連携プロジェクト助成等共同研究開発助成金
室内VOC検知及び空気質のモニタリングのための光センサの開発
H17〜H21
(2005〜2009)
JST戦略的創造研究推進事業
セキュリティ用途向け超高感度匂いセンサシステムの開発(爆薬および爆薬マーカーに対する鋳型分子認識膜の作製)
H17〜H18
(2005〜2006)
経済産業 地域新生コンソーシアム
オンサイト型環境汚染物質高感度迅速分析システムの開発
H17〜H18
(2005〜2006)
文部科学省 知的クラスター創成事業産業クラスター連携プロジェクト
ナノ構造高感度薄膜センサを用いた大気・室内環境中有害物質の検出技術の開発
H17〜H18
(2005〜2006)
日本学術振興会 科学研究補助金(萌芽研究)
マトリックス中のナノ細孔設計による中空空間の高効率機能化に関する研究
H16〜H18
(2004〜2006)
総務省消防庁 消防防災科学技術研究推進制度
分子認識による超感度火災検知センサの開発
H16 (2004)北九州産業学術推進機構 アジア大学との科学技術共同研究開発組成事業
高分子表面の有機・無機ナノ複合化による新規軽量ガラスの開発
H14〜H19
(2002〜2007)
理化学研究所(共同研究)
有機・無機ナノ複合体の構造制御と機能増幅システムのモデル化
H14〜H18
(2002〜2006)
文部科学省 知的クラスター創成事業産学官共同研究(第I期)
環境システム(水質化学物資センサの開発)
H14〜H15
(2002〜2003)
日本学術振興会 科学研究補助金(若手研究B)
チタニアインプリントゲルによるキラル認識と蛋白の2次元標的化

研究室の歩み

特  記  事  項
202104月:新4年生受け入れ(ハンサムな男3名)、修士(3名)
202004月:新4年生受け入れ(ハンサムな男3名)
04月:海外留学生受け入れ(博士後期課程1名)
201904月:新4年生受け入れ(3名)、修士(1名)
201804月:新4年生受け入れ(3名)、海外留学生受け入れ(博士前期課程1名)
10月:海外留学生受け入れ(博士後期課程1名)
12月:【記者発表】唾液の匂い成分による口腔がん診断技術の発明
201704月:新4年生受け入れ(3名)
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
200504月:科研費萌芽研究採択
2004
2003
200204月:科研費若手研究B採択
200104月:李研究室オープン

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