細胞分化制御因子ASYMMETRIC LEAVES2の解析
名古屋大学大学院 上野 宜久 個々の細胞において、適切な位置で適切な時期に適切な増殖や分化が成立することで、多細胞生物の発生は成し遂げられる。この高度に制御された細胞の増殖や分化を分子のレベルで理解することを目指し、私たちはシロイヌナズナを材料に葉の形態形成を分子遺伝学的に解析している。劣性変異体asymmetric leaves2 (as2)では、葉身の形態および葉脈パターンが野生型とは著しく異なり、左右非相称的な葉を形成する。また、as2の葉ではclass1-KNOXが異所的に発現し、ある条件下では高いシュート再生能を示した。これらの結果から、as2変異体の責任遺伝子産物AS2は時間的/空間的に適切な位置に依存した細胞分化を制御していると考えられる。AS2は植物に固有の新奇なタンパク質をコードしており、その産物に相同性の高いドメイン (AS2-domain) を有する遺伝子がシロイヌナズナのゲノム上に41個存在してファミリーを形成している。劣性変異体as1は、as2と酷似した表現型を示す。AS1はキンギョソウの葉の向軸側の分化に関与するPHANのオルソログである。私たちはこれまでに、AS1とAS2は同一の制御系に存在することを遺伝学的に示し、試験管内で直接相互作用することを明らかにしている。左右対称で扁平な葉の発生にAS2がどのように寄与しているか理解を深めるために、グルココルチコイド受容体のリセプタードメイン (GR) を融合したAS2 (AS2-GR)を異所過剰発現する形質転換体を作出し解析した。さらに現在は新奇な相互作用因子を分子遺伝学的に探索している。これらから現在得られている知見を紹介し、葉状器官の発生における軸に依存した細胞分化とAS2の機能について、議論したい。
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