age; auxin altered gene expression mutants の分離と解析
  大野 豊(日本原子力研究所 先端基礎研究センター) 

 植物ホルモンであるオーキシンは、植物の生長や分化を制御する重要な物質である。その作用メカニズムのひとつとして、ある種の遺伝子発現のパターンに変化を及ぼすことが知られているが、そのシグナル伝達経路はよくわかっていない。エンドウ由来のPS-IAA4/5遺伝子は、オーキシン初期応答遺伝子として最も詳しく解析されている遺伝子の一つで、当該遺伝子の5'側の上流にはオーキシン応答にかかわる塩基配列(auxin-responsive domain、AuxRD) が同定されている。演者らは、AuxRDを突然変異体のスクリーニングのための道具として用いることによって、これまで行われてきたオーキシン耐性などの形態的変化を指標としたスクリーニングでは得られなかった新規のオーキシンシグナル伝達系に変異を持つミュータントが得られるのではないかと考え、実験を行った。まずPS-IAA4/5-AuxRDの下流にレポーター遺伝子としてGUSをつなげ、トランスジェニックアラビドプシスを作製し解析した。明所で育成した芽生えを10-7M以上のIAAで処理すると、主に根の伸長帯でオーキシン特異的なGUSの発現がみられ、エンドウ由来のAuxRDが異種の植物内でもAuxRDとして働くことを確かめた。つぎに種々のオーキシン関連突然変異体と交雑することにより、それぞれの変異がGUSの発現に与える影響についても解析した。その結果、根の伸長帯におけるオーキシン感受性についていえば、axr1, axr4, aux1は10-100倍高い濃度のオーキシンで野生型のように反応が起こる低感受性変異体であるのに対して、axr2, axr3では高濃度のオーキシン処理でも反応がみられないオーキシン無感受性変異体であることが明らかになった。このAuxRD-GUS形質転換体の種子をEMSで処理し、M2種子をスクリーニングすることにより、野生型ではGUSの発現のない低濃度のオーキシン処理でもGUSの発現がみられる突然変異体を分離した。このうちの2系統については、変異遺伝子がそれぞれ1番と5番の染色体にマップされ age1, age2 (altered auxin gene expression) と名付けられた。age1は伸長帯のGUSの発現が野生型の1/10の濃度のIAA(10-8M)でも誘導される変異体で、age2は根の維管束部にオーキシン処理をせずとも恒常的にGUSの発現がみられる変異体であった。 RNAの発現解析から、age1, age2 は、外性オーキシンによって誘導される遺伝子発現に変化を及ぼしていることが明らかになった。
 現在age1のポジショナルクローニングを進行中である。

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